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50年以上持つ家とは(外壁編)

今日は、50年持つ家の外壁について解説をしていきたいと思います。

最近は家づくりのコストがすごく上がっているので、より一層「質を長期間保てる家にしたい」というニーズはどんどん高まっていますよね。そんな中で、営業の現場では外壁の優位性についてお客様にアピール合戦をするので、たくさんの説明を聞いてお客様が混乱したという話をよく聞きます。今日はその辺に対しての1つの考え方、基準について解説しますね。

外壁と一口で言ってもいろいろあります。例えば一番ポピュラーに外壁に使われている、サイディングというものです。これには6つの種類があります。

1つは窯業系と言われているもの。セメント系のパルプなんかを混ぜて固めたような板です。それから金属系と言われているもの。金属のガルバ板の後ろに、一部断熱材を貼ったようなものです。金属そのものという物もあります。樹脂系と言って、プラスチック樹脂で形成したもの。それ以外に、木質サイディング(板塀)があります。最近はウッドサイディングとも言いますが、サイディングというのは一部加工が施されたり実(さね)が付いているような物を言います。板塀とほぼ同じです。

それ以外だと、日本で多いのは塗り壁です。古くは漆喰とか最近だとモルタル大壁があります。また、モルタルやサイディングの地の上にジョリパットを塗ることもあります。最近は、無機質で耐久性も風合いもある、火山灰で作られたそとん壁というものも選ばれます。それから、大手ハウスメーカーさんに多いのがタイル貼り住宅です。

これらには特徴があって、それぞれに良さやデメリット部分もあるわけです。例えば窯業系サイディングの中でもすごく幅があり、耐久性が10年のものから30年保証するものまであります。木質サイディングは10年しか持たないと言う人がいます。でも私は、ウッドロングエコみたいな無機質系の塗料を塗ったものは長く持つ実感があるので、30年持つという人の意見もわかります。塗り壁に関しても、10年・15年ぐらいは持つと言う人もいれば、そとん壁やタイル貼りは40年・50年はメンテナンスフリーで持つと言われる方もいらっしゃいます。

他の評価基準に、耐火性があります。樹脂系サイディング・木質サイディングは火に弱いです。ただ木質サイディングでも、特殊な耐火加工がしてあって全然燃えないものもあるので、これも幅があります。

重さに関しては、窯業系のサイディングは重たいです。タイルも重い傾向があると思います。コストに関しても1つの目安ですが、窯業系・樹脂系がやや安くて、塗り壁とかタイルは高くなるイメージです。

メンテナンス期間もいろいろあります。8〜15年、10〜15年という形が多いです。意外ですが、タイルも10年おきぐらいにメンテナンスした方がいいこともあります。というのも、タイル面自体は強いのですが、タイルの収縮による割れを逃がすための伸縮目地を必ず作るのです。これが劣化することがあるので、タイル壁を良い状態にしておくためには、短いスパンで見ておく必要があります。

ここまでを総じて、メリット・デメリットを簡単に説明します。窯業系サイディングは、コストとか施工性とかデザインに関しては豊富です。デメリットとしてコーキング劣化がありますが、最近はコーキングレスもあります。一番のデメリットは流行です。どれだけ最先端でカッコいいものを張っても、10年経ったら10年前のサイディングになります。

金属サイディングの良さは、素材感です。素材そのものを使うので。デメリットとしては、サビや塩害に弱いです。もちろん塗膜の処理によって幅がありますが。

樹脂系サイディングの良さは割れにくいことです。塗装をし直さなくてもいいとよく聞きますが、私の経験では、古い樹脂系サイディングは汚れがひどいことが多いです。洗う場合、足場を組んで洗わなければなりません。塗り直しよりは安く済むと思いますが、そこが良し・悪しかなという気はします。

木質サイディングのデメリットとしては、水に弱く腐食してしまうことです。また、防火地域では不燃加工していなかったら使いにくいです。良さとしては、木なので温もりがあるし、味があります。さっきの流行の話と逆になりますが、木の素材は時と共に味が出て、日本人が好きな侘び寂びに繋がるような味わいがあります。

塗り壁も幅はありますが、自由度もあるしデザインもいいし、耐久性の高いものもあります。ただ、一方でヒビや汚れが付きやすいです。漆喰の家でも、スイス漆喰は汚れが付かないとよく言いますが、日本漆喰で汚れが付いて汚らしくなる事例は、ゼロではありません。なぜそうなるかは後でまた説明します。

タイルに関しては、耐久性とかメンテナンスをあまりしなくていいのがメリットです。しかしタイルにも乾式タイル・湿式タイルの2種類があり、湿式は割れやすいです。乾式は、ビスやフックで引っ掛けてタイルを保持するものですが、湿式はモルタルや接着剤で貼り付けます。乾式は割れにくく、湿式は割れやすいことを覚えておいてください。

タイルにも、意外に流行があります。タイルは長持ちしますが、40年・50年経つと古くなるんです。耐久性がどうこうじゃなくて、デザイン的な見た目の話です。町を歩いていたら「このビルは古いな」「50年経ってるな」と思うようなビルがあるじゃないですか。それが味になるほど、素晴らしいデザインだったりオーソドックスなデザインだったりしたらいいと思うのですが。

ボワンと広がった話をして「結局何の話かわからない」と怒られそうなので、私の考えを言います。50年持つという視点で考えたら、重要なのは壁(表面材)の下地部分です。

ここまでの話では、外壁自体を種類別に解説してきました。それ以外に耐久性を担保するものとして、内装材の内側にあるバリアと通称で言われているものがあります。気密を担保したり、夏型結露を阻止するためのいわゆる可変型の透湿性のものです。当然外壁だけで家が持つわけではなく、その下には防水シートが必ずあります。このシートの透湿性が高いことが重要です。

透湿性が高いと、壁体内の湿気を出して構造体の寿命を延ばすという素晴らしい働きがあるのです。この働きを支えるものが、外壁の裏側の通気です。湿気というのはどんどん入ってきますから、これを吐き出します。あるいは雨水だったら、下に切れていくということになるのです。

外壁を選ぶ時は、表面材のチョイスも重要ですが、表面材を支える下地の部分に着目してください。防水がきっちりされているか、シートも性能が高いものが選ばれているかどうかをチェックしましょう。

私はよく、デュポンさんのタイベックシートやウルトさんのシートを薦めています。国産で出回ってる物に比べて、この海外製の2つは非常に耐久性が高いです。これは30年・40年の実績で証明されています。「表面は何でもいいけど、ここだけはいいものにしてね」といつも言っています。

そして建物の耐久性において、通気と換気は究極に重要です。きっちり計算されて作られた建物は、できた当時は強いですよね。でも、時間が経つと劣化していくじゃないですか。この劣化を遅らせるのは、雨漏りを止める止水と、入ってきたものを速やかに出す排気あるいは通気です。下屋なんかは、特に排気した方が絶対いいです。壁から入れて上に上げるなんて無理な設計をする人もいますが、実際はうまく流れません。こういうところをちゃんと建物の仕組みとしてできているかどうかが、重要だと思います。

雨仕舞という言葉を、最近よく好んで若い人に説明しています。家って潜水艦や原子炉じゃないので、完全に隙間なく止水することはできません。一定の隙間というのは出るものです。しかし、地球上に建つ家は重力の影響を受けますから、必ず水というものは上から流れて下に切れていきますよね。これが素早く切れて水が逆流して入らなければ、家は止水が担保できるのです。勾配や水切りとかで水を上手に逃がしていくことを、雨仕舞と言います。

さきほど、高耐久の壁としてそとん壁を紹介しました。そとん壁は少し値段が高いけど素晴らしいものだと思います。ただ、あれは軒が出ていない建物に使うと結構汚れるんです。壁としてはメンテナンスフリーかもしれないけど、「あんなに汚れたらどうなの?」と思うような現実の施工例もたくさん見ます。特にデザイナーの方が作った店舗なんかで、雨が当たり放題みたいな所のそとん壁は、数年で見るも無残な汚れ方をすることもあるほどです。そうなってくると、塗り壁で何を選ぶかよりも雨仕舞をどれだけちゃんとやるかが優先順位が高いのかなと思います。

その上で外壁材(窯業系サイディングなど)を選ぶとなると、流行というデメリットがありますよね。これをどう逆手に取るかがポイントになると思います。昔流行った柄みたいに、柄物には流行があるじゃないですか。無地の物は比較的流行が少ないです。だから無地物の方がいいかなと思います。

もっと言うと、素材を選ぶべきだと思います。例えばタイルも、焼き物・瀬戸物という素材ですよね。金属系のガルバも、木質系も素材です。あるいは石を貼るという手段もあります。安藤忠雄先生が得意なコンクリートの打ちっ放しも、コンクリートという素材です。ああいうものに関しては流行り・廃りが少なくて、しかもベーシックなデザインをすれば時の流れに左右されません。もちろん古くなるし汚れることもあるけど、味が出てくることを考えたら、いいんじゃないかなと思ったりします。

外壁材を何を使うかという姿勢も、もちろん大事です。ただ、それを支える下地の部分や雨仕舞も大事だということも頭に置いていただいて外壁を選んでいただくと、満足できるものがチョイスできると思います。ぜひ参考にしてみてください。

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